スペル星人
「吸血宇宙人 スペル星人」

ウルトラしりーズ唯一の欠番であったウルトラセブン第12話「遊星より愛をこめて」に登場していたスペル星人。
このスペル星人については雑誌の怪獣決戦カードで「被爆怪獣」との記述で紹介されてしまったことで、原爆被害者の会から抗議を受けたことにより、ウルトラ番組の制作会社であった円谷プロに確認もせず、抗議行動を朝日新聞が記事にして世間を煽ったため、事態の迅速な収束を図ろうとした円谷プロがスペル星人登場の話を欠番扱いにして、ウルトラセブンが再放送されてもこの話だけは放送を取りやめていました。
ウルトラセブンは1967年放映開始ですから、戦後20年ちょっとの時代です。
戦争における被害を含めた爪痕がまだあちこちで色濃く残っていましたから、原爆の被害にあった方々が敏感であったことは当然の時代でした。
スペル星人は当初、カブトムシのような姿をしていたところ、全身真っ白の人型であることに変更されていました。
これは監督の強い意向でそうなったらしいですが、デザインを担当した成田氏はポリシーに反するということで半ば投げやりにデザインしてしまったそうです。
スペル星人の姿は、被曝感アリアリの姿でしたから、この姿をより近くで見てしまうとこういうことが現実にもあったんだと知ってしまうと悲しい気持ちにもなります。
抗議した方たちはそうしたことも、番組のストーリーも知らずに「被爆怪獣」ということに敏感に反応して、果てが被爆者を怪獣扱いしてるというところまで行ってしまいました。
原爆、被曝の恐ろしさは現実を知り、正面から見つめて取り組まなければいけないことですが、子供向けの特撮番組で扱い、その姿を見せてしまうことはやりすぎであったことは明らかでした。
この時点での円谷プロの対処は大正解だったと思います。
まだ幼稚園児だった自分は、このスペル星人登場の話を目の当たりにしています。
子供に減額とか被曝といっても分かるはずがなく、スペル星人の姿に抵抗感みたいなものを感じ、ストーリーにしても分からなかったことを今でも覚えています。
この話が欠番扱いになっていたことを知ったのは、ネット社会になってからですからずいぶん後年のことでした。
スペル星人①
スぺリウム爆弾の事件で荒廃してしまったスペル星で、その住人・スペル星人が治療のため新たで汚染されていない血液を求めて秘密裡に地球に飛来し、地球人に化けて世に潜んでいたことに物語は始まります。
時代がかなり進んでいたウルトラセブンがモロボシダンとなってウルトラ警備隊にいたことから、血を吸われていた若い女性が突然昏倒し、やがて死亡する事件が多発し、分析の結果、それは白血球が急に欠乏する「原爆病」に似た症状を発していたことを指摘したことからスペル星人の策略は破綻していきます。
スペル星人は何体かが飛来していて、巨大化する能力もあり、しかも飛行能力とビーム発射能力もあったことはいかにも宇宙人でした。
どんな惑星でも科学力が進めば、核開発に取り組み壁にぶつかるということでしょうけど、スペル星人との攻防はメトロン星人戦の二番煎じのようなところもあって、作品としてはいいものでありませんでした。

今の時代、被曝という現実は時が経ったためかその扱いには問題があります。
原爆使用はありませんが実験はこれまで幾度となくされていますし、原発事故は結構あったりしてます。
そういう問題は、身近でありながらもと高い次元で取り組み防止していかなればなりませんが、少なくとも子供向けの番組では刺激が強すぎるか無意味なので、もっと演出の方法を考えるべきでしたね。
このスペル星人の話の監督は変わり者として有名になった方ですが、変わりすぎてこれはいけませんでした。
スペル星人③