「エリ巻き恐竜 ジラース」
ウルトラマン放映開始間もなく、大怪獣ブームがやってきました。
怪獣たちが活躍する中、悪党としての怪獣に対し正義の使者であったウルトラマンが与えたインパクトは相当なもので、これは作り手だった円谷プロもそういう事態は想定していなかったでしょう。
リアルで見ていた者にとって、ウルトラマンはやっぱりHEROでした。
でも、どこか複雑な気分もあって、、、それはウルトラマンが登場する前は怪獣こそがHEROであったはずで、そのHEROが新たなHEROにやられてしまう、、、
でも、怪獣はやっぱり立派なHEROだったわけです。
怪獣ブームは、やっぱり大怪獣ゴジラがブームの火付け役であり主人公でした。
スクリーンの中で大暴れをして見る者を大いに引き付けたゴジラとブラウン管の中で引きつけたウルトラマン。
両者は制作会社は違えど、あの特撮の神様・円谷英二が作り上げたHEROでした。
初代ウルトラマンは30分1話完結方式で製作されていたHEROでしたけど、毎回違う怪獣が出てくるのはとっても楽しみでした。
でも、今にして思うのは怪獣を制作する立場になって考えてみれば、それはそれは大変なことで、しかも初代ウルトラマンは視聴率30%を有に超えるお化け番組でしたから、単純に怪獣を出せばいいというわけではないプレシャーがあったはずです。
同じ円谷英二監督がもたらしてくれたもの、それは大怪獣ゴジラが初代ウルトラマンと共演を果たしてくれたことでした。
ゴジラの着ぐるみを使って初代ウルトラマンならではの怪獣を作り出す、あとで聞いた話ですけどゴジラの着ぐるみは返却しなければならなかったそうで、迂闊に傷つけられなかったということだったみたいです。
そこで見た目にはあまり変わらない工夫と襟巻をつけてしまうという大胆さで創出された怪獣がジラースということでした。
しかも、当時は恐竜も注目を浴びていて、イギリス・スコットランドのネス湖にネッシーという恐竜がいるらしいといううわさが流布されていました。
ゴジラも元は深海に潜む恐竜で、ジラースはそのネス湖から秘密裡に持ってこられたネッシーとは別の恐竜が培養されたものでした。
恐竜だったという共通点、それは巷の流行をうまく使った演出でしたけど、見た目に分かりながらも楽しいものでした。
口から熱戦を吐くというところもいかにもゴジラっぽかったですし、ジラースはゴジラなんだとわかっていても、初代ウルトラマンとゴジラの競演が見られた気分で、実に楽しかったのはようく覚えていますし、友達の間では大いに話題になりました。
何故、ネス湖のネッシーの仲間みたいな恐竜が日本へ、、、それはほとんど恐竜に没入してしまった恐竜博士の信じられないような思惑と行動によってもたらされたことでした。
急流が両生類である必要はありませんでしたけど、その育成にはウルトラQから並々と受け継がれていた怪奇性がアンバランスゾーンを生み出したような空間を作り出し、それを壊してしまったのも魚を釣り人が大量に捕ろうと撒いたカーバイドに刺激されておとなしかったジラースが暴れだしてしまったという人災でした。
初代ウルトラマンとの戦いは闘牛士のようでジラースの襟巻をとってしまうという怪奇技を演出し、果てはウルトラ霞切りという急所を突いた技で、見事にゴジラの姿をそのままに出してしまいましたね。
これも一つのユニークさでしょうけど、今の時代にはない許せるユニークさだったからこそ、ジラースの登場が見事に生きたということなんだと思います。