トカゲロン⑪
「トカゲロン」

海面ライダーはショッカーが生んでしまった改造人間ですが、脳改造まで施してショッカーの意のままに操られる改造人間が本来の姿でした。
仮面ライダーは脳改造がほどこされる寸前に、発案者の科学者の翻意によって脱出してしまったために、ショッカーと対峙することになってしまったわけです。
脳改造がほどこされる前とは言え、肉体改造は済んでしまっていてバッタの能力が移植されていました。
バッタと言えばその脚力に特徴がありますが、ここが異様にクローズアップされたわけです。
仮面ライダーの決め技・ライダーキックは、そうした脚力から生み出されたものでしたけど、改造素体となってしまった人間体・本郷猛も優秀なスポーツマンであり、人間としてはかなり優れた運動能力を持っていたわけですから、優れたキックになっていたに違いありません。
しかもIQ600という超天才科学者でもあったわけですから、状況と改造された自分の肉体を理解していれば、戦いを経るごとにその戦い方にも多岐にわたる方法を駆使出来ていったものだと思われます。
ショッカー最大の敵となってしまったわけですが、その対抗策としてショッカーは原子力研究所に目をつけ、ガードが高くバリアーが張り巡らされた原子力研究所には従来の改造人間を再生させただけでは目的を達せないことに気づきました。

脚力に特徴のあったバッタをモチーフとして仮面ライダーを生み出してしまったショッカーは、今度は脚力に強力さがあったトカゲをモチーフとし、更にその脚力を破壊的に向上させるためプロサッカーのエースストライカーに目をつけ、新型改造人間トカゲロンを生み出します。
バリアーが張り巡らされていた原子力研究所を破壊して放射能をばらまくには、重さ5kgの「バーリア破壊ボール」を20mの距離から投げ込む必要があり、そのために開発された改造人間がトカゲロンだったということになりますね。
トカゲロンは身長190㎝、体重183㎏もあったということですから、単にキック力だけではなく、その破壊的なキック力を生み出すために強靭な肉体が必要だったということにあるんでしょうね。
この時点で、トカゲロンは仮面ライダーを上回るほどの能力を持っており、ショッカー最大の壁もこのトカゲロンの登場で崩れたかというように初戦、仮面ライダーは敗れ去ります。
傲慢かつ嫌味なトカゲロンの性格は改造前から変わらず、しかし一旦敗れても元はIQ600も持っていた青年が改造されてしまった仮面ライダー。
ここに現状の能力に溺れたトカゲロンと進化しようとした仮面ライダーの構図が透けて見えます。
それが「電光ライダーキック」が生み出され、トカゲロンと再生改造人間は敗れ去っていくことに証明されていました。
こういう進化が仮面ライダーの真骨頂であり、それがためにショッカー最大の壁になり続けていった所以でもありました。
トカゲロン①
トカゲロン⑨
仮面ライダーはその主演俳優が第9話、10話の撮影時にバイク事故で大怪我を負い、撮影に参加できなくなっていたため、苦肉の策の中トカゲロンが登場した第13話まで様々な立案と工夫の中、番組が維持されていました。
この当時、折からの第2次怪獣ブームがやってきて、仮面ライダーという番組も様々な立案がされていたようです。
ショッカー改造人間に怪獣のエッセンスと導入するということで、怪人というよりは怪人からショッカーのベルトを外して怪獣らしいデザインを施す、或いはショッカー改造人間を巨大な怪獣にしてしまうということで仮面ライダー巨大化計画もあったようです。
一部の番組スタッフが等身大HEROにこだわって、ウルトラもの一線を画すようにした当初の意図が維持されたわけですが、この時の巨大化計画の名残がトカゲロンだったという気もします。

トカゲロンは外見上、改造人間というよりは怪獣のようでしたからね。
トカゲロン⑦